海外進出の経営戦略の策定方法と目指す必要性|重要なポイントも紹介
目次[非表示]
- 1.海外進出をを目指す必要性
- 2.海外進出の経営戦略の策定方法
- 3.海外進出の経営戦略で重要なポイント
- 3.1.市場調査とターゲット市場の選定
- 3.2.自社の強みと弱みの分析と把握
- 3.3.競争環境の分析
- 3.4.文化・法律の理解
- 3.5.資金計画とリスク管理
- 4.まとめ
海外進出をを目指す必要性
多くの日本企業がグローバル化、海外進出しているのには、複数の理由があります。企業が海外進出を目指す必要性について、次の3つの視点に分けて紹介します。
■国内の市場規模の縮小
企業が海外進出を目指す理由の1つは、国内市場規模の縮小です。日本では少子高齢化に伴う人口減少が進んでおり、今後も消費量の減少や経済規模の縮小が続くと予想されています。市場規模が縮小傾向にある中で、企業が売上・業績を伸ばすのは簡単ではありません。しかし、世界に目を向けると、人口は増え続けています。最近では、人口増加に伴い、市場規模の拡大が期待される海外地域に進出する企業が増えています。
■自社商品・サービスの販路開拓・拡大
自社商品やサービスの販路開拓・拡大も、海外進出の大きな目的です。今後市場拡大が期待される海外地域には、未開拓の商品・サービスジャンルがあり、市場参入する余地が残っているケースも少なくありません。日本国内の消費が期待できない中で、企業の生き残り戦略として、海外市場をターゲットにした事業展開が注目されています。
■生産コストの削減
生産コストの削減も、海外進出の必要性の1つです。日本では少子高齢化を背景に労働人材が不足しており、今後も人件費が上昇する恐れがあります。国内中小企業の中には、安価な輸入商品との競争で生き残るために、材料費・人件費の削減を目的とした海外進出を選ぶ会社も見られます。最近では、経済発展に伴い中国の人件費が上昇した影響で、東南アジア諸国などの発展途上国に進出する日本企業が増えました。
海外進出の経営戦略の策定方法
経営戦略とは、企業の経営目標を達成するための方策全般を指す言葉です。企業活動の方針や指標、ルール・組織作りなども経営戦略と呼ばれます。経営戦略は、企業が長期的な環境変化に対応しながら、自社の強みを発揮して安定的に事業を継続させる目的で策定されます。
経営戦略の策定方法として、以下の各プロセスを解説するため、グローバル市場への適応に向けた海外進出戦略を考える際に役立ててください。
状況分析
まず、外部環境の分析として、進出を検討している地域の市場調査を実施します。経済成長率や消費者動向、競合企業の状況を把握するのが重要です。さらに、内部環境分析として自社の強みと弱みを客観的に整理し、海外市場における自社のチャンスを見つけ出します。
経営戦略や事業戦略を策定する際の状況分析としては、「SWOT分析」というフレームワークによる分析が有名です。SWOT分析では、内部環境における「強み」・「弱み」、外部環境に分類される「機会」・「脅威」の4つのカテゴリーを分析します。
目標設定
海外進出成功には、進出の目的や位置付けを考え、企業としてのビジョンを明確化するプロセスが欠かせません。目標設定にあたり、海外進出の目的をあらゆる角度から検討することで、リスクを慎重に見極めるのが重要です。
企業が海外進出を選択することで、販路拡大、生産コスト削減といったメリットが得られる可能性があります。しかし、経営戦略を策定する際には、デメリットや海外進出以外の選択肢にも目を向ける必要があります。長期的な視点で、目標・方向性を検討しましょう。
戦略策定
海外進出の目的、ターゲット市場が明確になったら、自社の優位性を活用した具体的なグローバル戦略を策定します。自社に必要な経営資源を洗い出した上で、進出形態・生産・販売・設備・人員・資金などの具体的な内容を盛り込んだ行動戦略を策定します。まずは、5年先までを目処に大まかな計画を立て、実現可能性を検討する方法がおすすめです。
海外進出の経営戦略で重要なポイント
海外進出は、企業に大きな成長機会を提供しますが、同時に多くのリスクや挑戦が伴います。また、海外進出を成功させるためには、経営戦略にとって重要なポイントを押さえるのが大切です。
企業が海外市場に進出する際に押さえるべき重要な要素や課題として、以下の5つを解説します。
市場調査とターゲット市場の選定
海外事業を成功させるには、海外市場調査と適切なターゲット市場の選定により、現地マーケットのニーズに合わせた戦略を策定するのが重要です。進出先の国や地域を見極めるために、どういった市場に需要があり、どのような地域にビジネスチャンスが存在しているかを調べる必要があります。
市場調査では、アンケート調査や統計データから数値データを収集・分析する方法、インタビューなどから数値化できない情報を集める方法を組み合わせるのが大切です。
自社の強みと弱みの分析と把握
進出先市場で競争力を持つために、自社の製品・サービスがどのように適応できるか、どこに課題が存在するかを見極める必要があります。まずは、自社独自の魅力や強みを分析し、ライバル企業と差別化できるポイントを明確にしましょう。
また、グローバル市場における自社プロダクトの可能性を分析し、改善が必要な弱みを適切に把握するのも重要です。VIROやSWOT分析などのフレームワークを活用し、自社の強みと弱みを可視化しましょう。
競争環境の分析
競争環境の分析とは、進出先の市場動向や競合となる現地企業の動向などを分析・把握することです。マクロ環境分析とミクロ環境分析を使い分けることで、より精度の高い分析結果が得られます。
マクロ環境分析は、政治・経済といった、自社が直接影響を及ぼさない潮流を把握することです。一方、ミクロ環境分析は、市場・顧客動向などの自社活動が一定程度関与できる周辺環境の分析を指します。
市場や競合他社の分析には、政府・専門機関の統計データや企業ホームページの情報を活用するのが一般的です。さらに、日系企業数や訪日観光客数などのデータが日本との親和性の把握に役立つ場合もあります。
文化・法律の理解
海外進出時には企業イメージや信頼性を守る対策として、海外の文化・商慣習・法律が事業にどのように影響するかを理解し、状況に応じた戦略を立てるのが重要です。国ごとに適用される法律や適用要件が異なるため、進出国の法制度に沿った運営体制を整備する必要があります。現地の法律に詳しい専門家と連携して、アドバイスを求めるのも1つの方法です。
また、現地の文化・商慣習と企業活動の間にギャップがあると、企業イメージの低下につながる恐れがあります。トラブルを防ぐためには、異国への正しい理解と社内での情報共有が欠かせません。政治・宗教・地域性など、あらゆる側面から異国の文化・慣習を調査しておきましょう。
資金計画とリスク管理
海外進出には多くのコストがかかるため、資金調達方法やリスクへの対策をしっかり計画するのが大切です。事業が黒字化し、軌道に乗るまで数年はかかると想定し、十分な資金を用意する必要があります。自社が、国や民間の補助金・助成金制度の対象になるかどうかも早めに調べておくと安心です。
現地の情勢変化によるリスク、企業や従業員の安全性に関するリスクなど、想定されるリスクには詳細なマネジメント計画が必要です。さらに、インターネット上のセキュリティ脅威・セキュリティ事故といったリスクへの対応も欠かせません。企業を取り巻く環境は刻々と変化するため、定期的な情報収集や対策のアップデートも求められます。
まとめ
日本企業が海外進出を目指す背景には、国内市場の縮小、販路拡大、生産コスト削減などの必要性があります。特に人口減少や経済縮小が進む日本に対し、海外市場では需要拡大が見込まれます。
進出を成功させるためには、経営戦略を策定し、状況分析や目標設定、具体的な戦略立案が欠かせません。市場調査、競争環境の把握、自社の強みと弱みの分析を行い、現地の文化や法律への理解も重要です。資金計画やリスク管理を適切に実施することで、長期的な成功につなげられます。企業は環境変化に柔軟に対応し、確かな戦略と対策をもって海外市場に適応することが求められます。