
海外進出している日本企業の総数・地域一覧|おすすめの国も解説
近年、日本企業の海外進出はますます加速しています。国内市場の成熟や少子高齢化を背景に、成長の場を海外へ求める動きが活発化しており、幅広い分野でグローバル展開が進んでいます。その一方で、「どの国に進出すべきか」「成功している日本企業には共通点があるのか」といった疑問を抱く経営者や担当者の方もいるでしょう。
当記事では、海外進出している日本企業の一覧と、おすすめの海外進出国と動向、海外進出のメリット、成功事例を詳しく紹介します。海外進出拠点を検討している場合は、成功のヒントとしてぜひお役立てください。
1. 海外進出している日系企業の総数一覧

2023年度末時点で、海外に拠点を持つ日本企業の総数は2万4,058社にのぼり、そのうち製造業が1万173社、非製造業が1万3,885社となっています。製造業を上回る数の企業が、サービス業や卸売業などの非製造分野で海外展開していることが特徴です。
【海外進出している日本企業の総数(2023年度)】
|
業種 |
法人数 | ||
|---|---|---|---|
| 全産業 | 24,058 | ||
| 製造業 | 10,173 | ||
| 食料品 | 489 | ||
| 繊維 | 366 | ||
| 木材・紙・パルプ | 187 | ||
| 化学 | 989 | ||
| 石油・石炭 | 39 | ||
| 窯業・土石 | 207 | ||
| 鉄鋼 | 288 | ||
| 非鉄金属 | 332 | ||
| 金属製品 | 621 | ||
| はん用機械 | 451 | ||
| 生産用機械 | 798 | ||
| 業務用機械 | 361 | ||
| 電気機械 | 629 | ||
| 情報通信機械 | 855 | ||
| 輸送機械 | 2,154 | ||
| その他の製造業 | 1,407 | ||
| 非製造業 | 13,885 | ||
| 農林漁業 | 80 | ||
| 鉱業 | 118 | ||
| 建設業 | 404 | ||
| 情報通信業 | 740 | ||
| 運輸業 | 1,327 | ||
| 卸売業 | 6,955 | ||
| 小売業 | 700 | ||
| サービス業 | 2,484 | ||
| その他の非製造業 | 1,077 | ||
(出典:経済産業省「海外事業活動基本調査 第54回 調査結果(2023年度実績)」/https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040281896)
非製造業では業種別に見ると卸売業(6,955社)やサービス業(2,484社)が多く、製造拠点だけでなく販売・流通・サポート体制を現地化する動きが進んでいます。一方、製造業では輸送機械(2,154社)や電気機械(629社)、化学(989社)など、グローバル需要の高い分野が中心です。
2. 日本企業が海外進出するのにおすすめの国

2023年度の調査によると、日本企業の海外拠点はアジア地域が全体の約68%を占め、中国やASEAN諸国への集中が顕著です。一方で、北米(12.6%)や欧州(11.1%)にも一定の進出が見られ、グローバル展開の多極化が進んでいます。
【国別・海外進出企業の拠点数(2023年度)】
| 地域 | 拠点数 | 割合(%) |
|---|---|---|
| 全地域 | 24,415 | 100.0 |
| 北米 | 3,079 | 12.6 |
| アジア | 16,547 | 67.8 |
| 中国 | 6,900 | 28.3 |
|
ASEAN10 |
7,263 | 29.7 |
| その他アジア | 2,384 | 9.8 |
| 欧州 | 2,709 | 11.1 |
| その他 | 2,080 | 8.5 |
(出典:経済産業省「海外事業活動基本調査 第54回 調査結果(2023年度実績)」/https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?stat_infid=000040281896)
今後の事業展開では、インドやベトナムなど新興国への成長期待が高く、米国やドイツといった先進国も安定した拠点として位置づけられています。
【地域別・今後の事業規模についての調査(2024年)】
| 国・地域 | 拡大(%) | 現状維持(%) | 縮小(%) | 第三国(地域)へ移転・撤退(%) |
|---|---|---|---|---|
| 全地域計 | 45.2 | 49.0 | 4.8 | 1.0 |
| インド | 80.3 | 19.1 | 0.6 | 0.0 |
| ブラジル | 65.1 | 27.7 | 4.8 | 2.4 |
| UAE(アラブ首長国連邦) | 60.2 | 37.5 | 1.1 | 1.1 |
| ベトナム | 56.1 | 40.7 | 2.8 | 0.5 |
| 韓国 | 55.9 | 41.9 | 2.2 | 0.0 |
| 南アフリカ共和国 | 54.2 | 43.8 | 2.1 | 0.0 |
| オランダ | 54.1 | 44.3 | 1.6 | 0.0 |
| メキシコ | 50.9 | 46.2 | 2.9 | 0.0 |
| オーストラリア | 50.3 | 48.4 | 1.3 | 0.0 |
| ドイツ | 49.6 | 44.7 | 4.9 | 0.8 |
| 米国 | 48.6 | 46.5 | 4.2 | 0.7 |
| インドネシア | 47.3 | 49.3 | 2.8 | 0.0 |
| 英国 | 42.7 | 53.3 | 2.7 | 1.3 |
| シンガポール | 42.5 | 52.7 | 2.9 | 1.9 |
| フランス | 37.5 | 58.9 | 3.6 | 0.0 |
| タイ | 34.1 | 60.9 | 4.5 | 0.6 |
| 中国 | 21.7 | 64.6 | 12.3 | 1.4 |
| 香港 | 12.7 | 76.2 | 10.5 | 0.6 |
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2024年度 海外進出日系企業実態調査|全世界編」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/9414c66b08fc05a1/20240022.pdf#page=13)
総じて、日本企業の海外進出状況を見ると、リスク分散と市場成長性の両立を図りつつ、アジアを中心に多様な地域で事業拡大を進める傾向が強まっています。ここからは、日本企業が海外進出するのにおすすめの国を、地域ごとの特徴や今後の展望と併せて詳しく解説します。
2-1. 中国
中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、2022年の貿易総額は約43兆8,000億円に達しています。主要輸出品は半導体製造装置や電子部品、プラスチックなど、輸入品では通信機器や衣類などが中心です。2024年時点で中国に進出する現地法人企業数は約1万3,034社ですが、ここ数年は「チャイナリスク」と呼ばれる政治・経済リスクの高まりにより、進出意欲はやや減退傾向にあります。米中対立によるサプライチェーン分断や、反スパイ法施行による事業活動の制約、人件費上昇などが主な要因です。
一方で、中国は14億人超の巨大市場を有し、介護や日本食レストランなどのBtoC分野では依然として成長余地が大きいとされています。今後は製造拠点の整理や東南アジアへの移転を進めつつも、消費市場としての可能性を見据えた長期的な海外進出戦略を構築する必要があります。
(出典:外務省「中国基礎データ」/https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/data.html)
(出典:帝国データバンク「日本企業の「中国進出」動向調査(2024 年)」/https://www.tdb.co.jp/resource/files/assets/d4b8e8ee91d1489c9a2abd23a4bb5219/5c143b3ac4c24148a7eae00c4baa5d5d/p240801.pdf)
2-2. 米国
米国は日本企業にとって有力な進出先であり、2024年に黒字を見込む企業の割合は66.2%と、新型コロナ禍前の2019年の水準を初めて上回りました。製造業では電気・電子機器や運輸業の業績が好調で、半導体・EV・クリーンエネルギー分野の需要拡大が追い風となっています。一方で、賃金上昇や人材不足が深刻化しており、工場作業員や専門職での採用難が経営課題の上位を占めます。そのため、多くの企業が既存社員の賃金引き上げや教育・訓練の強化を進めています。
調達面では、米国内調達が48.5%に達し、サプライチェーンの現地化が加速している状況です。今後1~2年で約半数の企業が事業拡大を予定しており、カリフォルニア州やテキサス州を中心に、販売・高付加価値製品の生産・新規事業開発が活発化しています。成長産業を軸に、米国市場での存在感をさらに高める動きが続くでしょう。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2024年度海外進出日系企業実態調査|北米編」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/9e738bd7fd2c3f7d/20240027.pdf)
2-3. インド
インドは、近年日本企業から注目を集める進出先の1つです。2023年時点で日系企業は1,434社、拠点数は5,205拠点に達し、そのうち半数以上が製造業を占めています。国際協力銀行(JBIC)の調査でも、インドは3年連続で「有望な事業展開先」第1位を獲得しており、その勢いは衰えを知りません。背景には、政府主導の製造業振興政策「メーク・イン・インディア」の推進や、14億人を超える人口と拡大する中間層による旺盛な内需があります。
実際、日系製造業の83.1%が2024年に黒字を見込み、79.7%が今後事業拡大を予定するなど、経営環境は良好です。特に化学・医薬、精密機器、電機分野で成長が著しく、インドを生産拠点および販売市場の両面で重視する企業が増加しています。一方で、税務・行政手続きの煩雑さや地場サプライヤーの品質など、進出後の課題も残されています。今後は、法制度整備や人材育成を進めながら、巨大市場としてのポテンシャルを確実に取り込むことが日本企業の成長の鍵となるでしょう。
(出典:在インド日本国大使館「インド進出日系企業リスト(2024 年 10 月時点)」/https://www.in.emb-japan.go.jp/files/100867251.pdf)
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「在インド日系製造業のいま」/https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2025/22eee05fc62beda4.html)
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「日系企業の8割が黒字も、当面は国内に注力」/https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2025/0302/aaec7be7241247ba.html)
2-4. タイ
タイは、ASEANの中心に位置し、周辺諸国へのアクセスのよさから「東南アジアの物流ハブ」として日本企業に高い人気を誇ります。2024年度の調査では、タイで企業活動が確認された日系企業は6,083社と、前回2020年度比で227社増加しました。タイは、整備が進むタイ・ベトナム・カンボジアを結ぶ陸路「南部経済回廊」や、首都バンコクから中東・欧州まで直行便がある交通網などを生かし、製造・輸出拠点としての地位を確立しています。
さらに、BOI(タイ国投資委員会)による投資奨励制度では、法人税や輸入関税の免税、土地所有の容認などが外資誘致を推進している状況です。一方で、人件費上昇や地域間格差といった課題も残るものの、デジタル産業やエコツーリズム、バイオ分野などの新成長領域は拡大中です。今後もASEANのハブとして、タイは日本企業の重要な拠点であり続けるでしょう。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「タイ日系企業進出動向調査 2024 年度」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/32a9472f08549876/20240042.pdf)
2-5. 韓国
韓国は、日本にとって第3位の貿易相手国であり、両国は長年にわたり緊密な経済関係を築いてきました。2024年の日韓貿易総額は前年比7.7%増の約12兆円に達し、対韓投資額も前年比375.6%増の約61.2億ドルと急伸しています。電子・電気機器、自動車、鉄鋼など産業構造が類似しており、産業内貿易が活発です。また、2023年には日韓通貨スワップ協定が7年ぶりに再開され、経済協力の再強化が進みました。
2024年に営業利益が黒字見込みの企業は80.4%と高水準を維持しており、営業利益見込みの主な改善要因は「現地市場での需要増加」となっています。一方で、人件費上昇や離職率の高さといった課題も見られますが、市場規模の大きさ、整備されたビジネス環境、安定した社会情勢は海外進出を図る上で魅力です。今後は販売・研究開発分野の拡大を軸に、技術革新と連携を通じて日韓経済の相互成長が一層進むと期待されます。
(出典:外務省「大韓民国基礎データ」/https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/data.html)
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2024年度海外進出日系企業実態調査|アジア・オセアニア編」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/2737fbd089afdb85/20240024rev1.pdf)
2-6. ベトナム
ベトナムは、近年日本や中国からの生産移管先として注目を集める国です。直近5年間で生産移管を行った企業のうち24.8%がベトナムへ移しており、ASEAN諸国の中でも突出しています。背景には、人件費の安さや安定した政治情勢、ワーカーの雇いやすさといった利点があり、製造業を中心に44.0%の企業が設備増強を実施しています。2024年の営業利益見込みについて「黒字」と回答した日系進出企業は64.1%でした。
一方で、行政手続きや税制の煩雑さ、法制度の未整備など、ビジネス環境には課題も残ります。競争環境も激化しており、中国や韓国企業とのシェア争いが進んでいます。そのため、多くの企業が現地企業や外資系企業との取引拡大、営業機能の強化、現地人材の登用を進めているのが現状です。今後は、販売チャネルの多様化と現地化の推進が、ベトナム市場での持続的な成長を左右するでしょう。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2024年度海外進出日系企業実態調査|アジア・オセアニア編」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/2737fbd089afdb85/20240024rev1.pdf)
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「在ベトナム日系企業、「非日系市場」への営業強化」/https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/2262dc38873bfa80.html)
2-7. インドネシア
インドネシアは、ASEAN諸国の中で最も高い黒字企業比率(72.1%)を誇り、製造業・非製造業ともに堅調な業績を維持しています。化学・医薬、繊維・衣服、プラスチック製品、情報通信業、商社・卸売業での黒字割合が高く、内需の強さが安定した経営基盤を支えています。営業利益の改善要因としては「現地市場での需要増加」が最も多く、人口約2.8億人を抱える巨大市場の成長が企業収益を後押ししています。一方、悪化要因として需要減少や人件費上昇が挙げられ、政策運営の不透明さや税務手続きの煩雑さも課題です。
事業展開の方向性を見ると、47.3%の企業が今後1~2年で拡大を予定しており、非製造業の拡大意欲が顕著です。インドネシア政府が推進する国産化促進政策の影響で現地調達率も上昇傾向にあり、地場企業からの調達が50.8%を占めています。今後は、内需拡大を背景に販売機能を強化しつつ、品質・技術力の高い現地企業との連携を深めることが、日本企業の持続的な成長に必要となるでしょう。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「在インドネシア日系企業の経営環境」/https://www.jetro.go.jp/newsletter/jkt/2025/250206%20JETRO.pdf)
2-8. ドイツ
ドイツは欧州最大の経済大国として高い技術力と産業基盤を有し、2024年の営業利益を黒字と見込む企業は67.0%と堅調な水準を維持しています。ただし、2025年には42.5%へと低下する見通しで、エネルギー価格の高騰や景気停滞、環境・デジタル関連規制の強化が企業収益を圧迫しているのが主な理由です。環境対応コストや人件費の上昇、輸入規制の強化により、競争環境としての魅力度が低下しているとの声も聞かれます。
日EU・EPAに基づく輸入時の原産性確認(検認)では、回答企業の12.9%が対応を求められ、うち37%がドイツ税関からの照会であったことから、同国の運用の厳格さが際立っています。今後は、環境・デジタル両面での規制対応力を強化しつつ、サプライチェーンの透明性と効率化を進めることが、ドイツ市場での持続的な競争力確保のポイントとなるでしょう。
(出典:日本貿易振興機構(ジェトロ)「2024年度海外進出日系企業実態調査|欧州編」/https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/bf50342a7b795067/20240035rev1.pdf)
3. 日本企業が海外進出するメリット

日本企業が海外進出することで得られるメリットは、市場の拡大、成長機会の獲得、コストやリスクの分散、国際的な競争力の強化など多岐にわたります。ここからは、海外進出の主なメリットについて解説します。
3-1. 販路を拡大できる
少子高齢化による人口減少や消費停滞が続く日本国内に比べ、東南アジアやアフリカ諸国などでは経済成長が著しく、中間層の拡大により新たな需要が生まれています。こうした新興国市場は、今後も購買力の向上が見込まれることから、企業にとって魅力的なターゲットです。
さらに、EコマースやSNSの普及により、現地消費者へのアプローチ手段も多様化しています。これにより、従来は大企業が中心だった海外展開も、中小企業やスタートアップにとって現実的な選択肢となりつつあります。
3-2. 生産コストを削減できる
製造拠点を人件費や原材料費が比較的安価な国へ移すことで、コストを抑えながら競争力を維持することが可能になります。ベトナムやフィリピンなどは、労働力が豊富で賃金は日本に比べて低く、製造業を中心に多くの企業が拠点を設けています。
また、現地で部品や資材を調達する「現地調達化」によって、為替変動の影響を軽減し、供給の安定化も図れます。これにより、企業はコスト面での優位性を確保しつつ、利益率の改善を目指せるでしょう。
3-3. 一部の国では税制優遇が受けられる
国や地域によっては、海外企業の誘致を目的に税制優遇措置(インセンティブ)を設けている場合があります。たとえば、インドネシアやベトナムなどでは一定期間の法人税免除や減税制度を導入しています。
また、中国やマレーシア、カンボジアなどでは経済特区を設け、外国企業に対して税制面の優遇を提供しています。こうした制度を活用すれば、税負担を軽減しながら利益の最大化を図れるでしょう。
3-4. 外国の優秀な人材を雇用しやすくなる
ITやエンジニア分野では、ベトナムやインドなどで優れた技術者を多く輩出する国が多く、人材不足に悩む日本企業にとって魅力的な労働市場です。現地に拠点を設けることで、語学力や文化的理解に優れた人材を直接採用でき、事業運営を円滑に進められます。
また、日本からの出向者よりも人件費負担が軽減される点もメリットです。現地スタッフを幹部候補として育成すれば、企業のグローバル化が加速し、海外市場でのブランド価値向上にもつながります。
4. 海外進出した日本企業の成功事例
海外進出を成功させている日本企業は、現地の文化やニーズを的確に捉え、自社の強みを柔軟に生かしています。ここからは、海外市場で成果を収めた日本企業の代表的な成功事例を紹介します。
4-1. 株式会社任天堂
アメリカ任天堂を率いたレジー・フィサメィ氏の就任以降、同社は本社との文化的ギャップを乗り越えながら、現地目線での販売戦略を確立しました。「Wii」や「ニンテンドーDS」など、家族で楽しめる革新的な製品を生み出し、世界中のユーザー層を再び拡大させました。
近年ではUSJの「スーパー・ニンテンドー・ワールド」や映画「スーパーマリオブラザーズ・ムービー」など、IP(知的財産)を活用した新たなグローバル展開へと進化しています。
4-2. 日清食品ホールディングス
日清食品ホールディングスは、1971年に「カップヌードル」を発売し、現在では世界約100か国以上で販売されるグローバルブランドへと成長しました。アメリカをはじめ、アジアや欧州各国に拠点を展開し、地域の食文化に合わせた柔軟な商品開発を進めています。
安藤百福氏の「食を通じて社会に貢献する」という精神は、現地の暮らしを尊重しながらも新たな市場を切り拓く原動力となり、日清食品を世界に誇る日本発の食のイノベーターへと導きました。
4-3. 株式会社ファーストリテイリング
ユニクロを展開する株式会社ファーストリテイリングは、旗艦店(フラッグシップストア)を核としたブランディング戦略によって海外進出を成功させた企業です。米国では当初、郊外型店舗での販売が低迷しましたが、2006年に開業したニューヨーク・ソーホー店が大きな転機となりました。
海外展開戦略に基づく大々的なプロモーションと洗練された店舗デザインにより、現地でのブランド認知を一気に拡大します。その後、上海・ロンドン・ソウル・パリ・ニューヨーク五番街など、世界の主要都市に旗艦店を展開し、グローバルブランドとしての地位を確立しました。
4-4. 株式会社力の源ホールディングス
株式会社力の源ホールディングスが展開する「一風堂」は、2008年のニューヨーク出店を皮切りに、世界約16か国・地域で約300店舗以上を展開するグローバルブランドへと成長しました。ニューヨークやロンドンなどの大都市では直営店を展開し、ブランドの発信拠点として位置づけています。
一方、アジア諸国では現地企業とのライセンス契約を活用し、地域に根ざした店舗運営を実現しました。クールジャパン戦略の推進やメディア露出も積極的に活用し、グローバルブランドとして確固たる地位を築いています。
4-5. 吉野家ホールディングス
吉野家ホールディングスは、世界各国で約974店舗(2022年時点)を展開し、グローバル体制を確立した外食企業です。1975年にアメリカ・デンバーで「Beef Bowl」として海外初出店して以来、現地ニーズに応じた柔軟な店舗モデルを構築しています。
台湾や中国では現地ニーズに合わせた店舗モデルを導入し、マレーシアではハラル認証を取得するなど、宗教・文化に配慮した柔軟な経営戦略を展開しています。
まとめ
日本企業の海外進出は、単なる販路拡大ではなく、自社の強みを世界に発信し、グローバルな価値を創出する重要な経営戦略です。成功企業の共通点は、現地の文化や市場を尊重しながら、日本らしさを生かした柔軟な海外ビジネスを展開している点にあります。
さらに、グローバル展開を支えるには、データと現場をつなぐDXの活用も欠かせません。クオリカの「TastyQube Growth」は、売上・食材・勤怠を本部から一元管理できる外食業向け店舗管理ソリューションです。国内20,000店舗以上、海外700店舗以上の導入実績を誇り、多言語対応・現地サポート体制により、国内外の多店舗経営を強力に支援いたします。


